(2012年9月6日発表JCBLプレスリリース)

保有クラスター爆弾の廃棄進む ―クラスター爆弾禁止へ目覚しい進展―
『クラスター爆弾モニター報告 2012年版』

 最新版の『クラスター爆弾モニター報告2012(”Cluster Munition Monitor Report 2012”)』は、本日、発行されます。
2010年8月に発効したクラスター爆弾禁止条約は、現在111カ国が署名、75カ国が批准又は加入しました。条約発効の2010年8月まで署名していなかった国のうち、グラナダ、スワジランド、トリニダード・トバゴの3ヵ国が2011年に新たに加入した国です。

『クラスター爆弾モニター報告2012』では、以下のことが報告されています。

保有クラスター爆弾の廃棄

・条約成立後、19の締約国が8580万の子爆弾を含む74万4231発のクラスター爆弾を廃棄した。これは締約国の保有クラスター爆弾の68%と子爆弾の60%が廃棄されたことを意味する。
・2011年には、ハンガリー、ポルトガル、スロベニアが保有クラスター爆弾の廃棄を完了した。
・最大の保有国であるドイツとイギリスで、大量のクラスター爆弾が廃棄された。ドイツは保有するクラスター爆弾の66%にあたる6300万の子爆弾を2011年の終わりまでに廃棄し、イギリスも72%の保有弾(3800万の子爆弾)を2012年4月までに廃棄した。
・クラスター爆弾を保有する締約国のほとんどで廃棄が進められており、いくつかの保有国は廃棄期限(批准後8年以内)よりもかなり早く廃棄を完了すると見込まれている。それらは、オランダ(2012年末)、イギリス(2013年末)、スウェーデン(「2014年に遅れることなく」)、イタリア(2014年末)、日本(2015年2月)、ドイツ(2015年末)である。

クラスター爆弾の使用

・第二次世界大戦以降、少なくとも19の政府軍が36の国と4つの紛争地帯(国連に国家として認められていない地域)でクラスター爆弾を使用した。
・2011年の上半期には、リビアとタイで新たなクラスター爆弾の使用が確認された。
・未確認であるものの、不発弾の証拠写真を含む信頼できる情報として、2012年の上半期にスーダンとシリアによる新たなクラスター爆弾の使用が報告された

不発弾による汚染

・世界で少なくとも24の国と3つの地域が、子爆弾を含むクラスター爆弾の不発弾によって汚染されている。その中でも、ラオスとレバノンは重度の汚染国である。
・また、非締約国のカンボジア、セルビア、ベトナム、紛争地域であるナゴルノ・カラバフと西サハラも同様にクラスター爆弾によって重度に汚染されている。

犠牲者数

・2012年7月31日までに、16の条約締約国を含む30の国で犠牲者が報告されている。
・少なくとも2011年の終わりまでの犠牲者は世界中で1万7194人と報告されたが、実際の犠牲者は2万から5万4000人になると推定される。
・犠牲者の94%は民間人である。民間人の犠牲者の大部分は男性(83%)で約40%が子どもである。
・不完全なデータではあるが2011年には、カンボジア、イラク、ラオス、レバノン、スーダン、西サハラで55人の新たなクラスター爆弾の犠牲者が確認された。

投融資の禁止

・ 6カ国(ベルギー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、ニュージーランド、スイス)がクラスター爆弾への投資を明示的に禁止する国内法を発効した。
・オーストラリア、アイルランド、ニュージーランド、ノルウェー、ルクセンブルグ、スウェーデンの政府年金基金が、クラスター爆弾製造者への投資を禁止した。
・日本、デンマーク、ドイツ、スウェーデンは、条約はクラスター爆弾製造への投融資を禁止していないという見解を示した一方、23カ国がクラスター爆弾製造への投融資は条約で禁止されるという見解を示している。
・少なくとも17の締約国の金融機関がクラスター爆弾製造への投資をやめるための行動をとり、社会的責任のある投資を促進した。

国際協力

・2011年は、21ヵ国が60百万ドル拠出し、その90%が除去支援に充てられ、残りの10%が犠牲者支援、危険回避教育、保有爆弾の廃棄に充てられた。

JCBL代表理事 北川 泰弘のコメント
この報告書は、締約国が保有するクラスター爆弾の廃棄が進んだと大きく評価している。しかし、条約に署名しなかった85ヵ国の内3ヵ国が2011年に加入したのみで、2012年以降の未署名国の加入が進んでいないこと、署名した108ヵ国の内36ヵ国が未批准であることが懸念される。各国政府また関係諸機関は、条約の普遍化に更なる力を入れなければならない。
また、締約国の国内にある米軍基地にクラスター爆弾が配備されることを違法とする国が36ヵ国であるのに対し、合法であるとする国は、日本、オランダ、英国の3ヵ国のみである。日本を含めたこれらの国は、世界的な動向を踏まえた上で自国内の米軍基地でのクラスター爆弾の保有に関する条約の解釈を見直す必要がある。

本件に関する問い合わせ:地雷廃絶日本キャンペーン事務局