クラスター爆弾の使用は許されない!
-『クラスター爆弾モニター 2016』が発行されました -

地雷禁止国際キャンペーン/クラスター兵器連合(ICBL/CMC)は 2016 年 9 月 1 日、クラスター爆弾に関する各国の政策や被害状況、禁止条約締約国による履行状況などの最新情報をまとめた『クラスター爆弾モニター2016』(Cluster munitions monitor 2016 )を発表しました。以下は、最新版における注目点です。これらの問題は 9 月 5 日からジュネーブで開催されるクラスター爆弾禁止条約の締約国会議で議論されます。

クラスター爆弾の使用

• 2015 年 7 月 1 日以降、非締約国であるシリアとイエメンでクラスター爆弾の使用が確認されている。
o シリア政府軍が 2012 年 7 月から 2016 年 7 月の間に少なくとも 13 種類の空中投下型および地上発射型のクラスター爆弾を使用した。この期間、シリアの 14 の行政区域のうち 10 の区域で少なくとも 360 回の使用が確認されている。ただ、実際の攻撃の回数はこの数字より大きいと考えられる。
o ロシアは、2015 年 9 月 30 日に反政府勢力地域でのシリア政府との共同作戦に加わって以来、クラスター爆弾の使用を否定してきたが、クラスター爆弾を使用したという確かな証拠がある。
o サウジアラビアとその連合国は、2015 年 3 月 25 日にイエメンでフーシ派への攻撃を開始して以降、空中投下型と地上発射型のクラスター爆弾を使用した。2015年 4 月から 2016 年 2 月の間に少なくとも 19 回の攻撃で 7 種類のクラスター爆弾を使用したことが記録されている。アラブ首長国連邦はクラスター爆弾の使用を否定しているが、サウジアラビアは 2015 年 4 月に一度使用したことを認めている。
o 2008 年 5 月の条約の成立以降、締約国によるクラスター爆弾の使用に関する報告はない。

条約の解釈

• 少なくとも 37 か国が、非締約国との共同軍事行動中であっても、条約で禁止されている活動を意図的に支援することは禁止されていると判断している。一方で、オーストラリア、カナダ、日本、イギリスは、第 1 条の規定(条約で禁止されている活動を支援することを禁止する)は、条約 21 条の相互運用性の条項に優先しないと判断している。
• 少なくとも 33 か国が締約国の領土内を非締約国のクラスター爆弾が通過することやクラスター爆弾を保有することは禁止されていると判断している。しかし、締約国であるオーストラリア、カナダ、日本、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、イギリスは非締約国のクラスター爆弾の通過や保有は条約で禁止されていないと主張している。
• 10 の締約国がクラスター爆弾関連への投資を禁止する法律を施行している。また、少なくとも 28 の締約国と署名国がクラスター爆弾の製造への投資は条約で禁止されている支援行為にあたると判断している。

被害状況

• 2015 年には 417 人の被害者が確認された。最も被害者が多い国はシリアで 248 人が被害にあった。次いでイエメンの 104 人が多い。両国とも、被害の多くはクラスター爆弾の攻撃中に発生している。
• 2015 年にクラスター爆弾の攻撃中に被害者が発生した国はシリア(現在進行中)、ウクライナ(2 月)、イエメン(3 月以降)である。
• 2015 年にクラスター爆弾の不発弾による被害が発生した国は、少なくとも 8 か国、2地域である。それぞれ、アフガニスタン、カンボジア、チャド、レバノン、ラオス、シリア、ウクライナ、イエメン、ナゴルノカラバフ、西サハラである。
• 被害者の大多数は市民であり、2015 年の数字では全被害者の 97%に上る。

廃 棄

• クラスター爆弾を保有していた 40 の締約国のうち、29 か国が保有しているクラスター爆弾を廃棄した。廃棄したクラスター爆弾は 140 万、子爆弾の数は 1 億 7,290 万個に上る。この数字は締約国が保有していたクラスター爆弾の 93%、子爆弾の 97%を占める。
• 2015 年、7 つの締約国が 79,184 個のクラスター爆弾と 870 万個の子爆弾を廃棄した。ドイツとイタリア、日本、モザンビーク、スウェーデンが保有しているクラスター爆弾の廃棄を完了した。また、2016 年 6 月にフランスが廃棄の完了を宣言した。

製造と移転
• 17 の締約国および非締約国であるアルゼンチンがこれまでにクラスター爆弾の製造を止めている。
• 2015 年 11 月、シンガポールの民間企業であるシンガポール・テクノロジー・エンジニアリングがクラスター爆弾の製造を停止したと発表した。シンガポールは輸出のモラトリアムを実施しているが、クラスター爆弾の放棄は約束していない。

クラスター爆弾禁止条約の現在

• 2016 年 8 月 10 日現在、クラスター爆弾禁止条約の署名国あるいは批准国は 119 か国である。このうち、条約のすべての条項に法的に拘束される締約国は 100 か国である。条約は 2010 年 8 月 1 日に発行しており、クラスター爆弾によってもたらされる被害を終わらせる唯一の国際的な取決めとなっている。
• 2015 年 9 月以降、コロンビア、アイスランド、パラオ、ルワンダ、ソマリアが条約を批准し、キューバとモーリタニアが加入した。

以上