Cluster Munition Monitor 2017 Major Findings和訳<PDF>

クラスター爆弾禁止条約の現在
• 2017年8月1日現在、クラスター爆弾禁止条約の署名国あるいは批准国は119ヵ国である。このうち、条約のすべての条項に法的に拘束される締約国は102ヵ国である。条約は2010年8月1日に発効しており、クラスター爆弾によってもたらされる被害を終わらせる唯一の国際的な取決めとなっている。
• 2016年9月以降、マダガスカルとベナンが条約を批准した。
• 2016年12月5日、32の非署名国を含む141ヵ国がクラスター爆弾禁止条約を支持する国連総会決議を採択した。ロシアとジンバブエのみが決議への反対票を投じた。

使用
• 2008年5月の条約の成立以降、締約国によるクラスター爆弾の使用に関する報告はない。
• 2016年7月1日以降、クラスター爆弾の使用は、シリア政府によるシリア内での使用とサウジアラビア率いる連合国によるイエメン内での使用が確認されている。イラクとリビア内でもクラスター爆弾が使用されたという報告があったが、『クラスター爆弾モニター』は使用の証拠を確認できなかった。

被害者
• 2009年に『クラスター爆弾モニター』が発行されて以降、2016年はクラスター爆弾による被害者数が2番目に多い年であり、2015年の倍の数字であった。
• 2016年には合計で971人のクラスター爆弾による被害者が記録された。このうち、最も被害が大きかったのはシリア(860人)であり、次いでラオス(51人)、イエメン(38人)である。
• 被害者のほとんどは市民であり、2016年には、その割合は98%を占めた。
• シリアとイエメンにおいて、被害はクラスター爆弾による攻撃中に発生しており、少なくとも857人の被害者を生んだ(シリア837人、イエメン20人)。
• 2016年には、クラスター爆弾の不発弾の被害は10ヵ国で発生した。10ヵ国は以下の通りである。ボスニア・ヘルツェゴビナ、イラク、ラオス、レバノン、リビア、セルビア、南スーダン、シリア、ベトナム、イエメン。
• アメリカがラオスと東南アジアでクラスター爆弾を使用した1960年代以降、2016年までの間に21,200人のクラスター爆弾による被害者が確認されている。しかし、確認されていない多くの被害者がいるとみられる。推計では、33の国と地域で約56,000人がクラスター爆弾の被害に遭っていると考えられている。

被害地域
• 2017年8月現在、26ヵ国(12の締約国、1の署名国、13の非署名国)と3の地域にクラスター爆弾の不発弾が残っている。さらに2つの締約国でクラスター爆弾が残っている可能性があるが明らかではない。
• 2016年と2017年にシリアとイエメンで、2016年前半にナゴルノ・カラバフで、クラスター爆弾が使われたことで被害地域は広がっている。

除去
• 2016年には、少なくとも88㎢の土地が除去され、ランドリリース(調査と除去)を通して140,000の子爆弾が処理された。しかし、この数字は不十分なデータに基づいている。多くの国では調査と除去の結果は正しく記録・報告されていない。
• 締約国であるモザンビークは2016年12月に除去の完了を報告した。
• 紛争や治安の悪化が原因で、2015年と2016年に3つの締約国(アフガニスタン、イラク、ソマリア)、6つの非署名国(リビア、南スーダン、スーダン、シリア、ウクライナ、イエメン)でランドリリースの作業が遅れた。

被害者支援
• ドブロブニク行動計画にあるように、締約国は2020年までにクラスター爆弾の被害者支援の改善に取り組んできた。今回の報告書では、国際協力が減少している中ではあるが、被害者が質の高いリハビリテーションを受けられるように、また経済活動に参加できるようにする支援を増やしていくように求めている。
• すべての被害国でなんらかのリハビリテーションプログラムがあるが、被害者支援の質と量の改善が必要である。
• 多くのプログラムは、クラスター爆弾の被害者のプログラムへの参加を進めようとしているが、まだ不十分な場合も多い。
• クラスター爆弾の被害者を支援している団体は資金的、人的なリソースの不足に直面しており十分なサービスが提供できていない。

製造と移転
• 18の締約国および非締約国であるアルゼンチンがこれまでにクラスター爆弾の製造を止めた。
• 2016年8月、アメリカのクラスター爆弾製造企業であるテキストロンがクラスター爆弾の製造を止めた。この企業はアメリカでクラスター爆弾を製造している最後の企業だったため、アメリカによるクラスター爆弾の製造は実質的に終了したことになる。

廃棄
• クラスター爆弾を保有していた41の締約国のうち、28ヵ国が保有しているクラスター爆弾を廃棄した。廃棄したクラスター爆弾は140万、子爆弾の数は1億7,500万個に上る。この数字は、締約国が保有していたクラスター爆弾の97%、子爆弾の98%を占める。
• 2016年、3つの締約国(スロバキア、スペイン、スイス)が56,171個のクラスター爆弾と約280万個の子爆弾を廃棄した。10の締約国が保有クラスター爆弾の廃棄をせず、数ヵ国が廃棄の為に資金的・技術的支援を必要とすることを示唆している。
• 2016年の後半と2017年の前半にクラスター爆弾の廃棄を完了した国はない。2016年6月にフランスが保有クラスター爆弾を廃棄した。

保有
• 多くの締約国が、条約で許されている探知や除去、廃棄のためのトレーニングや研究を目的とした保有をしないことを宣言している。
• 11の締約国がトレーニングや研究目的のクラスター爆弾を保有している。なお、ベルギー、チェコ、デンマーク、フランス、ドイツ、スペイン、スイスは当初保有していた数よりも大幅に保有数を減らしている。他方で、イタリア、オランダ、スウェーデンはまた保有クラスター爆弾を使用していない。また、スロバキアは、保有しているクラスター爆弾をすべて廃棄するとしている。

法制化と透明性
• 27ヵ国が条約の履行を目的とした特定の国内法を整備した。最も直近で国内法を成立させた国は2016年6月のモーリシャスである。また、24か国が国内法を作成中か作成を検討中である。さらに、32ヵ国が条約の履行には現行の国内法で対応可能としている。
• 82ヵ国が条約で求められている最初の透明性報告書を提出している。これは締約国の82%を占める。18カ国が透明性報告書を提出しておらず、その内5ヵ国は2011年に提出期限を迎えている。

条約の解釈
•少なくとも37ヵ国の締約国と署名国が、非締約国との共同軍事行動中であっても、条約で禁止されている活動を意図的に支援することは禁止されていると判断している。一方で、オーストラリア、カナダ、日本、イギリスは、第1条の規定(条約で禁止されている活動を支援することを禁止する)は、条約21条の相互運用性の条項に優先しないと判断している。
•少なくとも33ヵ国が締約国の領土内を非締約国のクラスター爆弾が通過することやクラスター爆弾を保有することは禁止されていると判断している。しかし、締約国であるオーストラリア、カナダ、日本、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、イギリスは非締約国のクラスター爆弾の通過や保有は条約で禁止されていないと主張している。
•締約国であるノルウェーとイギリスはアメリカが領土内にあるクラスター爆弾を撤去したことを確認した。しかし、アメリカは、締約国であるアフガニスタン、ドイツ、イタリア、日本、スペイン、そして非締約国であるイスラエル、カタールとおそらくクウェートでクラスター爆弾を保有しており、今後も保有し続ける可能性がある。
•10の締約国がクラスター爆弾関連への投資を禁止する法律を施行している。また、少なくとも28の締約国と署名国がクラスター爆弾の製造への投資は条約で禁止されている支援行為にあたると判断している。

 

★この件に関するお問い合わせ 地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)事務局 E-mail: office@jcbl-ngo.org

プレスリリースはこちらから