第22回締約国会議の結果概要

◇はじめに:

ロシアのウクライナ侵攻による東欧諸国の安全保障環境の変化により、条約締約国であるラトビア、リトアニア、エストニア、フィンランド、ポーランドの5カ国が条約から離脱するというかつてない事態に直面する中、同じく締約国であるウクライナは、条約の“運用停止”を表明。 また、条約第5条に基づく地雷除去期限の延長申請も14カ国にのぼる。

2024年に確認された地雷・ERWの犠牲者は52カ国で少なくとも6,279人にのぼり、2020年以来最大となった。このうち36か国が条約締約国である。民間人は記録された全犠牲者の90%(5,385人)を占めた。

2014年の第3回運用検討会議で採択された「2025年までに目標を達成しよう」という期限目標を迎えた今年、果たして条約の規範を守ることができるのか、地雷なき世界に向けた締約国の結束が問われる会議であり、この会議の議長を務める日本政府の采配も注目された。

12月1日、第22回締約国会議は、市川大使の開会の言葉に続き、茂木外務大臣のビデオメッセージ、国連の中満泉事務次長、ベルギーのアストリッド王女、ヨルダンのミレド王子、また犠牲者を代表してICBLのアレックス氏らの力強いスピーチで始まった。

それぞれが異口同音に、“世界の安全保障が大きく揺らいでいる”中で、この会議が、市民の命を守る人道条約を遵守することの意義を改めて確認する場であることを喚起した。

◇今回の締約国会議の重要なポイント

①「普遍化」のセッション:(12月2日午前)

*新規加盟国(マーシャル諸島、トンガ)を歓迎 

*7つの未加盟国(ミクロネシア、ラオス、モロッコ、アルメニア、韓国、アゼルバイジャン、レバノン)が発言。

*離脱した5カ国(エストニア、フィンランド、ラトビア、リトアニア、ポーランド)が離脱理由を弁明。それぞれが地域の安全保障環境の危機的変化に言及。

*ウクライナは不参加

*続いて30以上の締約国が発言。多くが離脱国に対する「遺憾」と、“運用停止”問題に言及。条約のフルインプリメンテーションを求めた。

②地雷除去期限の延長(第5条関係)

 *オマーンが地雷除去の完了を報告。

 *14カ国が延長期間における計画を説明。担当委員会からはタイが審議経過を報告。

 *申請国の多さは、第3回運用検討会議における期限目標を反映している。

 *領土問題に纏わる意見対立:UKとアルゼンチン、タイとカンボジア

③貯蔵地雷の廃棄(第4条関係)

 *2008年以来“違反状態”にあったギリシャ、クロアチアがよ  うやく動き出した。クロアチアは2026年3月に完了予定。

④国際協力と支援(第6条関係)

 *大きなドナー国に依存する国際支援の脆弱性

  ・2024年は世界全体で10億7千万ドルに。

  ・3大ドナー(米・独・EU)の拠出額が全体の2/3にのぼる。

  ・米国の援助資金カットの影響に鑑み、拠出可能は締約国に一層の支援を期待する。

 *受益国の偏り

・支援総額の33%がウクライナ一国に振り向けられた一方で、サブサハラ以南の国々

   は依然として資金不足の状態にある。

  ・犠牲者支援に拠出された資金は全体の5%に留まった。そのうち66%は4カ国に振り向けられた。より多くの国や地域の犠牲者に届く支援の在り方が求められる。

 

⑤最終合意文書

 開会前に懸念された離脱国への対応や運用停止に関して、以下の通り、条約の原則を守る明快な文言が盛り込まれたことを高く評価したい。

*5カ国の離脱に対しては: 47. Also in the context of its consideration of the operation and status of the Convention, the Meeting noted with regret that five States -・・・・・となり、「遺憾」という言葉が明記された。


 *運用停止に関しては: 51. The Meeting affirmed that the Convention does not allow the suspension of its operation and consequently its obligations. The Meeting called upon Ukraine, as a State Party, to further engage within the framework of the Convention. となり、条約は運用停止を「許してない」ことが明記された。

⑥その他

*条約の潜在的懸念点 ⇒ 新たな離脱の可能性(デンマーク、スウェーデン)

*タイ・カンボジアの領土問題も双方に均等な発言機会が与えられ、紛争解決に向けての

両国の対話を継続させる道筋を確保した

⑦最後に

色々と心配された今回の会議だったが、結果として、離脱に対する遺憾の意と、運用停止は許されないという条約の原則を締約国の総意として確認できたことは良かった。

離脱国があったものの、新規加盟国があり、さらに批准に向けて準備している未加盟国も複数ありと、引き続き、政府と市民社会のパートナーシップにより、オタワ条約を人道規範の礎として育てていくことの重要性と使命を強く感じる会議となった。

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