Global Day of Actionシンポジウム
第1部:今、クラスター爆弾禁止のためにーサバイバーの視点からー

第2部:日本の選択

日時:2008年4月19日(土)14:00-17:00 
会場:カタログハウス・ホール


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第2部:日本の選択

清水:タイトルを「日本の選択」としたのは、クラスター爆弾禁止には、立法府の方々に決断してもらう必要があると考えたからです。まずは民主党の藤田幸久さんにお考えを伺います。

藤田議員:私は国際NGOから国会に行ったので、NGOの人間としてこの問題に取り組み、そこから国の政策を動かすというつもりでおります。カペタノビッチさんのおかげで、グッと世論が盛り上がってきました。政治を動かすのは市民です。みなさんが動いて、世論が動いて、マスコミが取り上げると、政治が動く。やっとそのプロセスが動きだしたと感じています。日本は対人地雷の時と同様、クラスター爆弾についても、海岸線をいかに守るかという発想です。これは着上陸作戦に対する抑止力であると。そこに根拠がないということを、もっと訴えていく必要があると思います。

清水:続いて衆議院議員河野太郎さんです。

河野議員:日本は、何年か前から安全保障を一生懸命検証し、人権をと一生懸命訴えております。しかしそれが外交の柱になっているのか。色んな場面で日本がリーダーシップをとって国際世論を形成するのかと思うと、どうもそうでもない。やっぱり日本のポジションをもう少し早く明確にして国際世論を形成することに踏み込んでいかないとと思います。国内での議論でも、本当に海岸線の防衛の件で煮え切らないのか、それともアメリカが反対しているから先走っちゃ行かんと遠慮しているのか。人間の安全保障というならば、クラスター爆弾の被害状況はもうよくわかっているのですから、それを踏まえて議論しなきゃいかんと思います。

清水:目加田さんはオスロ・プロセスの一連の会議をみて、我々の立場、あるいは日本政府についてはどう感じていますか。

目加田説子(JCBL運営委員):この条約は軍縮条約ですが、もう一本の大きな柱は人道主義で、カペタノビッチさんみたいな被害者をどう救済していくのか、新たに被害者を生まないために何をすべきかということが書かれたものになるのです。対人地雷禁止条約から10年の経験を国際社会が重ねて、被害者とは例えばカペタノビッチさん本人だけではなく、ご家族やコミュニティも含まれるという定義が明記されています。CCWという特定の通常兵器を禁止しようという枠組みがあって、そこには米・露・中が入っているので、日本政府はそこでクラスター爆弾を禁止すると言っているのですが、CCWには人道主義的な被害者支援や国際協力などの責任はないんです。軍縮だけではなく人道主義、まさしく人間の安全保障をどう実現させていくのかという意味で、オスロ・プロセスは我々に課された試練、チャレンジだろうと思います。

1997年9月に小渕外務大臣が政治的決断をして、対人地雷全面禁止条約に日本が加盟しました。オタワでの調印式では小渕さん自らが署名をし、日本はそれから5年間で100億円の支援をすると明言されました。それ以降、日本はきちんと責任を果たし、対人地雷問題では非常に大きなリーダーシップを発揮したと高く評価されています。ですから、こういった政治的判断をぜひ今回もしてほしいし、国際社会からも、まさしくそこが期待されているのだろうと思います。

清水:日本政府内で合意を作っていくには、どのあたりがポイントになりますか。

藤田議員:一つは防衛省が、代替兵器の可能性がなければと言っていますが、それ以前にクラスター爆弾を防衛兵器としての使用をすることについて議論がされているのか。もう一つは、自衛隊が持つクラスター爆弾のうち3種類は旧式で、不発率を下げる技術がないということ。これは他の国も使用禁止を決めているし、日本もこの条約に入る前でも、これらは廃棄するという政治意志を発揮する、それは今の状況でもやりようがあると思います。

目加田:オランダは、旧式クラスター爆弾の廃棄処分を開始しました。とは言ってもノルウェー政府と一緒に全面禁止という方向に動いているのではなく、新式は保有し続けたいとう意志を持っています。この新式も含めて禁止対象とするべきではありますが、大事なポイントは、現時点で、旧式については、オスロ・プロセスに参加している大半の国、そして日本が「同じ意見だ」と言っているドイツやイギリスも禁止するとはっきり政策変更しています。つまり、そこが国際的な合意となって、オスロ・プロセスに臨んでいる。ところが日本は、この旧式についても現段階では代替装備がないから廃棄はしないと、外務委員会で防衛副大臣が述べています。オーストリアやベルギー、ノルウェーと言った国々は、旧式、それから一部の新式も禁止対象として廃棄処分をすでに開始しています。

河野議員:もし半歩でも前進するなら最後に引きずられて前に出るよりも、自分はここへ行きますと最初に明確にして、日本が進んだら他もついてきたという方が、外交的にははるかにプラスになると思うんです。対人地雷の時の小渕さんのようなリーダーシップが、残念ながら出ていない。外務省には大臣、副大臣が2人、政務官が3人います。その中に誰か一人でも強い意志があって、私がやりますと前に出てくるような環境を作るのが与党の責任かと思っております。

目加田:たしかに防衛上有効な兵器なのかという議論、日本の安全保障の議論も大事だろうと思いますが、なぜオスロ・プロセスなのかと言うと、人道的な被害がこうやっている間にも出ているからです。クラスター爆弾は、戦闘時にのみ被害が生じるのではなくて、それ以降も、例えば今でもラオスではベトナム戦争当時のクラスター爆弾で被害者が出ている。悠長にこれから10年かけて議論しましょうと言っている間に、多くの犠牲者が出てしまう。この人道的被害に対して国際社会は何をするのかということが問われているんです。日本がクラスター爆弾を保有し続けるというなら、これを国際社会にどう説明するのか。この辺りは、われわれ一人ひとりがじっくり考える必要があると思いますし、ぜひ人道的な視点からこの問題に取り組んでほしいと思います。

藤田議員:自衛隊がクラスター爆弾を保有している、この時に禁止条約に賛成する意味が非常にある。日本の影響力が高まり、感謝をされる政策だろうと思います。

河野議員:最近、永田町や霞ヶ関周辺で、軍縮という言葉があまり聞こえなくなったような気がします。本来、日本は軍縮のリーダーシップを取ろうという国であったはずです。しかし、どうもみんなが一歩出たら半歩出るみたいなことで困ったもんだなぁと。やっぱり政治が旗を振って、こういう方向に行くから具体策を考えろと下に落とす必要があると思うんですね。ぜひ、みなさんの方からもこれは政治のリーダーシップが必要ですよと、働きかけていただければと思います。

目加田:もう本当に待ったなしの状況です。どこまで議論を進め、日本の政治判断をどこまで進めていけるのか、私たちの課題だと思います。

カペタノビッチ氏:あらためて本日多くの方々にお越しいただきましたことに心から感謝申し上げます。みなさまの誤解を避けたいのですが、私は日本に友人としてまいりました。みなさまを非難して私の立場を押しつけようとは思っていません。みなさんで考えていただきたい。私は日本に来て、人々に温かく迎えられ、メディアの方々の関心の高さにはびっくりしました。セルビアに帰っても日本のことは、良い思い出となるでしょう。

清水:今日を大きなステップにして12月の調印式には日本が大手を振って署名できるように動けばと思います。これからもよろしくお願いいたします。

JCBLニュースレター44号(2008年6月発行)より


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