ミャンマーにおける新型コロナウィルス対策の現状と義足支援

JCBLミャンマー地雷犠牲者支援
現地コーディネーター アウン・チャン・タン
(訳・補足 代表理事 清水俊弘)

 

JCBL2017年から義足支援を続けているミャンマー。今年に入ってからの新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大している中、支援活動はどうなっているのか。現地コーディネーターから届いたミャンマーにおけるコロナウイルスの感染予防対策と活動の現状についての報告です。


功を奏した政府の迅速な対応

ミャンマー政府は、中国・武漢で発生した新型ウイルスの通知をWHOから受けた直後から国境検問所での監視の準備に着手し、21日には中国人向けの到着ビザ(VOAの発給を停止しました。また、ティンジャン(ミャンマー正月)での水掛け祭りイベントの中止や、ヤンゴンなど大規模な町で外出自粛措置に踏み切ったことで、ウイルス拡大を早期に抑えることができました。

814日現在、ミャンマー国内における感染者数は計369名で、うち回復者は321名、死亡者は6名となっています。

過去1ヵ月以上にわたり確認された感染者のほぼ全員が海外から帰国者で、国内での市中感染は見られません。ですが、今後隣国のインド、バングラデシュでの感染拡大の影響を受ける可能性もあるので、政府も警戒感は緩めていません。

とは言え、現在は特に厳しい行動制限(居住地区外に出る場合は「住民証明書」が必要)はなく、日常生活に支障をきたすことはありませんが、海外との流通の停滞や商品需要の減少によって、職を失う人々が増えていることは確かです。


平常通り稼働している義足工房

新型コロナウイルスの影響で義足工房の稼働状態が心配されましたが、幸い工房のあるカヤー州、ロイコー地区ではウイルスの感染者は出ておらず、通常通り作業を行うことができています。しかしながら、食材などの生活必需品の価格上昇や仕事が減るなど、生活面では少しずつ影響が出始めています。

2017年に始まったミャンマー地雷犠牲者支援は、半年間で50人を目標に義足を提供する事業です。開始からこれまでに約200名の方々に義足を提供することができました。

直近の半年(2月~7月)間では44名の方々の義足を製作しています。

閑散とした郊外の市場

44名のうち40代(13名)、5017名)で全体の8割近くを占めており、次いで多いのが30代(8名)です。女性は3名のみで残りは全て男性です。      

このことは、内戦時代にタイとの国境周辺で地雷を踏んだ人が多いことを表していると同時に、家族を支える実働年齢層に犠牲者が多いことを示しています。

これまでは、義足を付けることによって、市場での荷運びや清掃、販売などの仕事に就くことができましたが、コロナウイルスの影響で、そのような仕事が減少傾向にあり、義足を付けても、すぐに収入につながる仕事に結びつけることが難しくなってきています。

この状態が長引けば、生活のさらなる悪化は避けられません。なので、義足工房を稼働させながら、何か収入につながる道を同時に模索していく必要があります。もとより、犠牲者の社会復帰は長期的な視点で考えなければなりませんが、その前提となる社会そのものがこのような形で不安定な状態になることは想定していませんでした。


こうした状況で真っ先に職を失うのは彼らのような立場の人々です。持続的開発目標=SDGsで謳う「誰一人として取り残されない」社会を目指すには、この構造を十分に理解した上で、その土地、その人にあった支援が必要です。

JCBLは、引き続き近隣のアジア諸国で活動する仲間たちと連絡を取り合いながら、ポストコロナの活動を考えていきたいと思います。
(代表理事 清水俊弘)