(特活)地雷廃絶日本キャンペーン プレス・リリース 2013 年9 月5 日 発表

保有クラスター爆弾の廃棄進む
―クラスター爆弾禁止へ目覚しい進展―
『クラスター爆弾モニター報告 2013 年版』発表

クラスター爆弾に関する最新情報をまとめた『クラスター爆弾モニター報告2013(”Cluster Munition
Monitor Report 2013”)』は、2013 年9 月4 日に発表されました。
2010 年8 月に発効したクラスター爆弾禁止条約は、2013 年7 月31 日現在で112 カ国が署名または加入
しています。そのうち83 カ国が締約国で、条約を守る義務をおっています。

『クラスター爆弾モニター報告2013』では、以下のことが報告されています。

クラスター爆弾の使用
・未署名国のシリアは2012 年、2013 年上半期にクラスター爆弾を使用し、多数の一般市民の死傷者を出
し、110 カ国以上の国々がシリアのクラスター爆弾使用を非難しました。
・ミャンマー政府軍が2012 年と2013 年上半期にクラスター爆弾を使用したと思われます。また未確認
ですが、スーダンが2012 年と2013 年にクラスター爆弾を使用したとの情報があります。

クラスター爆弾の製造
・クラスター爆弾を製造していた16 カ国が条約に参加し、製造を止めました。未署名国のアルゼンチン
も製造を停止しました。

クラスター爆弾の移送
・条約未参加の3 カ国(シンガポール、スロバキア、米国)が輸出を一時停止しています。
・シリアで使用されていたエジプト製、ロシア製のクラスター爆弾は、最近の紛争中ではなく、過去に
移送されたものだと思われます。

クラスター爆弾の保有
・最近のクラスター爆弾保有国は72カ国で、その内24カ国が締約国または署名国です。

保有クラスター爆弾の廃棄
・ 2012年には、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、英国を含む9の締約国がクラスター爆弾17万3,973個、子爆弾2700万個を廃棄しました。2011年には、10の締約国がクラスター爆弾10万7000個、子爆弾1千760万個以上を廃棄しました。
・ 2012年にはオランダがクラスター爆弾19万1543個、子爆弾2580万個を廃棄して、廃棄を完了しました。2013年3月31日現在、英国はクラスター爆弾の95%、子爆弾の84%の廃棄を終えています。
・ クラスター爆弾を保有する締約国18カ国は、「条約発効後8年目以内」という期限のうちに廃棄を完了できるとしています。デンマーク、英国は2013年末、イタリア、スウェーデンは2014年、ドイツ、日本は2015年に廃棄完了と報告しています。

不発弾による汚染
・ 少なくとも26カ国と3地域が、不発の子爆弾を含むクラスター爆弾の残存弾に汚染されています。
・ グレナダは、1983年の米国の侵攻の際の不発クラスター爆弾、子爆弾を完全に除去したと2012年9月に宣言しました。
・ ソマリアは、1977-78年のオガデン戦争で使用されたと思われる子爆弾がエチオピアとの国境付近で見つかったため、汚染国リストに付け加えられました。イエメンもまた、サウジアラビア国境に近いサーダ統治区で残存クラスター爆弾が発見されたので汚染国リストに加えられました。
・ 未締約国のカンボジア、ベトナムはクラスター爆弾によって重度に汚染されています。

クラスター爆弾の除去
・2012年に11カ国と2地域の78平方kmから、クラスター子爆弾59,171個が廃棄されました。
・2012年に8つの締約国/署名国(アフガニスタン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、コンゴ共和国、イラク、ラオス、レバノン、モーリタニア)が不発の子爆弾の除去を行いました。
・未署名国のカンボジア、セルビア、ベトナム、イエメンと、ナゴルノ・カラバフ、西サハラの2地域も除去作業をしました。

クラスター爆弾の犠牲者
・ 2013年7月31日現在、クラスター爆弾の犠牲者は、12の条約締約国、4の署名国、3つの地域を含む31カ国で報告されました。少なくとも2012年の終わりまでの犠牲者は、世界中で1万7959人と報告されましたが、実際の犠牲者は5万4000人になると推定されます。
・ 確認された範囲内では、犠牲者の大部分(94%)は民間人です。民間人の犠牲者の大部分は男性(82%)で、その約半数が子ども(40%)でした。
・ 2012年、クラスター爆弾による190人の死傷者が確認されました。被害者のあった国は、2つの締約国(ラオス、レバノン)、5つの未署名国(カンボジア、セルビア、スーダン、シリア、ベトナム)、1つの地域(ナゴルノ・カラバフ)でした。

国際協力と支援
・2012年には、18の締約国とヨーロッパ連盟、国連開発計画がクラスター爆弾に汚染されている12の国々、2つの地域の除去、犠牲者支援、アドボカシーの支援に7020万USドルを供出しました。
外国のクラスター爆弾保有と移動
・少なくとも34の締約国と署名国は、締約国の領土内で、非締約国のクラスター爆弾が移動、保有されるのは条約で禁止されると述べています。締約国であるオーストラリア、日本、オランダ、ポルトガル、英国は、外国のクラスター爆弾の移動と保有は条約では禁止されないとの意見を表明しました。
・締約国であるノルウェーと英国の両国は、米国がそれぞれの領土から保有クラスター爆弾を移動させたと確認しました。
・ウィキリークスが発表した米国務省の電文によると、米国はクラスター爆弾を数ヵ国、締約国のアフガニスタン、ドイツ、イタリア、日本、スペイン、未締約国のイスラエル、カタールと、おそらくクウェートに保有しており、今後も保有を続けるであろうと見られています。

投融資の禁止
・サモア(2012年)、リヒテンシュタイン、オランダ、スイス(2013年)を含む9の締約国(ベルギー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、ニュージーランド)がクラスター爆弾への投資を明示的に禁止する国内法を発効しました。
・デンマークは、2013年5月にクラスター爆弾への投融資を禁止する予定であると発表しました。
・少なくとも17の締約国の金融機関が、クラスター爆弾製造への投資を止めるための行動をとり、社会的責任のある投資を促進しました。

JCBL代表理事 北川 泰弘のコメント
この報告書は、締約国が保有するクラスター爆弾の廃棄が進んだと大きく評価している。しかし、2012年8月以降の未署名国の加入が4カ国にすぎなかったこと、締約国のオーストラリア、署名国のカナダが米国のクラスター爆弾の保有、移動を合法と見ている点が懸念される。各国政府また関係諸機関は、条約の普遍化に更なる力を入れなければならない。
また、締約国の国内にある米軍基地にクラスター爆弾が配備されることを違法とする国が34ヵ国であるのに対し、合法であるとする国は、日本、オランダ、英国の3ヵ国のみである。日本を含めたこれらの国は、世界的な動向を踏まえた上で自国内の米軍基地でのクラスター爆弾の保有に関する条約の解釈を見直す必要がある。

“Cluster Munition Monitor 2013”および関係資料は、2013年9月4日10時(GMT)よりwww.the-monitor.org/lm/2013 にてダウンロードが可能です。

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本件に関する問い合わせ:地雷廃絶日本キャンペーン事務局