ランドマインモニター2016 (”Landmine Monitor Report 2016”)
Major Findings(大要)

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主な出来事
『ランドマインモニター2016』では、「地雷なき世界」という目標に向かって世界が進んでいることが記されている。しかし、同時に地雷対策への支援が過去 10 年間の中で過去最低に落ち込み、さらに 10 年間で最大の犠牲者が発生していることも明らかになっている。対人地雷を禁止することは世界的な規範となっているが、非国家主体や一部の非締約国は地雷を使用し続けている。地雷の除去を進めている国は多いものの、2015 年には除去活動の停滞が見られた。また、期限内に除去が終了する可能性のある国は極めて少ない。

対人地雷禁止条約の現在
162 か国が締約国であり、1 か国(マーシャル諸島)が署名国である。
• 昨年以来新しく条約を批准または条約に加入した国はない。最後の加入国は2014年8月のオマーンである。
• 2016 年 3 月、スリランカ内閣が対人地雷条約への加入を決定したと報じられたが、2016 年 11 月 1 日現在、加入のための手続きはまだとられていない。

地雷の使用
国家が対人地雷を使用するケースは少ない。
• 2015 年10 月から2016 年10 月の間、締約国による新たな地雷の使用は確認されていない。
• 非締約国であるミャンマー、北朝鮮、シリアが昨年1 年の間に対人地雷を使用した。
昨年1 年の間に10 か国で非国家主体が対人地雷を使用した。10 か国は、アフガニスタン、コロンビア、イラク、リビア、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、シリア、ウクライナ、イエメンである。
• 非国家主体の多くは、被害者が起爆させるタイプの簡易地雷やブービートラップを多用している。人の接近や接触によって爆発するこのような装置は対人地雷禁止条約で禁止されている。締約国であるカメルーンやチャド、ナイジェリア、フィリピン、チュニジア、そして非締約国であるイランとサウジアラビアで地雷が使用されたとの情報があったが、『ランドマインモニター』は確認できなかった。

被害者
2015 年、対人地雷や実質的に対人地雷として機能する簡易地雷、クラスター爆弾、他の不発弾による被害は、急激に増加した。
• 2015 年、6,461 人の被害者が発生し、少なくとも1,672 人が死亡した。この数字は、2014 年と比較して75%の増加となる。
• 2015 年の増加は、リビアやシリア、ウクライナ、イエメンでの武力紛争が原因である。また、被害の情報がより容易に入手可能となったことも大きい。特にリビアとシリアでは被害者の情報が体系的に収集されている。
• 2015 年の被害者数は、2006 年以降で最高を記録した。
• 2015 年は、『ランドマインモニター』の調べでは、簡易地雷による年間の被害者が最高を記録した。
2015 年には、56 の国と5 つの地域で被害が発生した。このうち37 カ国が地雷禁止条約の締約国である。
• 被害者のほとんど(78%)が市民である。
• 市民の被害者の38%が子どもである。年齢の詳細については不明である。
• 被害者の14%が女性である。近年と比べ、若干増加している。
• 被害の60%は、締約国で発生している。2014 年には70%の被害が締約国で発生していた。
• 『ランドマインモニター』は、1999 年に記録を開始して以来、10 万人を越える被害者の存在を確認している。

地雷対策への支援
2015 年、ドナー国および地雷被害国は、地雷対策への支援に4 億7,130 万ドルを拠出した。この金額は2014 年から1 億3900 万ドル、23%の減少である。また、3 年連続の減少であり、2005 年以降最低レベルを記録した。
35 のドナー国が3 億4,010 万ドルを国際的な支援として拠出し、41 カ国と3 つの地域が支援を受け取った。2014年と比較すると7,700 万ドルの減少であり、2005 年以降初めて4 億ドルを下回った。
• ドナー国のうちトップ 5 カ国は、アメリカ、日本、EU、ノルウェー、オランダである。この 5 カ国で国際的支援の71%を占めており、その額は2 億4,000 万ドルに上る。
• 13 のドナー国が支援を減らした。特にEU とノルウェーが5,700 万ドル減少させた。
• 受け取り国のうちトップ 5 カ国はアフガニスタン、イラク、ラオス、カンボジア、シリアである。これらの国で1 億6,190 億ドル、全体の48%を受け取っている。
• アフガニスタンが13 年連続で受け取り国のトップとなった。
• 2016 年、ドナー国は3 度の会議を開き、地雷対策活動への支援と条約実施支援ユニットへの支援を議論した。このような会議の開催は初めてであり、これらの会議が2016 年以降の支援額にどのような影響を与えるかは依然不明である。
14 カ国が自国の地雷対策活動に1 億3,120 億円を拠出した。これは、2014 年から6,200 億円の減少である。

被害と除去
2016 年10 月現在、64 の国と地域に対人地雷が残っている。
• 64 の国と地域の内訳は、36 の締約国、24 の非締約国、4 の地域である。2015 年の61 の国と地域から増加した。
• 3 カ国増加した理由は、ナイジェリアでの簡易地雷を含む新たな対人地雷の使用と、パラオ、モザンビークにおいてかつて埋設されていた地雷が新たに発見されたことによる。
• 100 平方キロメートルをこえて対人地雷が残っている国と地域は、アフガニスタン、アンゴラ、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カンボジア、チャド、クロアチア、イラク、タイ、トルコ、西サハラである。
171 平方キロメートルの地雷原が2015 年に除去された。2014 年には201 平方キロメートルが除去されている。
• 2015 年には、約15 万8,000 個の対人地雷と1 万4,000 個の対車両地雷が処理された。
• アフガニスタン、カンボジア、クロアチアで2015 年に過去最大の面積が除去された。これら3 カ国で全体の除去面積の70%以上を占める。
• 2015 年の除去面積の減少を1 つの理由で説明することは困難であるが、地雷対策への支援の減少が影響している可能性は高い。
• 過去5 年間で960 平方キロメートルの地雷原が除去された。130 万個の対人地雷と6 万6,000 個の対車両地雷が処理された。
1999 年に対人地雷禁止条約が発効して以降、26 の締約国と 1 つの非締約国、1 つの地域が地雷原の処理を終えた。
• 締約国であるウクライナが対人地雷禁止条約の第5 条に違反している。ウクライナは2016 年6 月1 日に条約で定められている除去期限を迎えたが、除去を終了していない。また、除去期限の延長も認められていない。
• 2015 年の第14 回締約国会議で5 カ国が除去期限の延長を認められた。5 カ国は、キプロス、エチオピア、モーリタニア、ニジェール、セネガルである。2 カ国が除去期限の延長を申請しており、2016 年の第15回締約国会議で検討される。
• 4 カ国のみが条約で定められた除去期限内に除去を完了する見込みである。4 カ国は、アルジェリア、チリ、コンゴ民主共和国、エクアドルである。

被害者支援
多くの被害者を抱える締約国の多くは、リソース不足のため被害者支援に関するマプト行動計画の実施に困難を抱えている。31 の締約国に関して次のような点が報告されている。
• 締約国の多くで、被害者のニーズを正しく把握するための現地調査が引き続き行われている。
• 約 3 分の 2 の締約国が被害者支援や被害者の権利を守るための調整メカニズムや国家計画を持っている。
しかし、ブルネイやクロアチア、セネガル、ウガンダでは、2015 年に期限が切れた被害者支援計画が更新されず、またアフガニスタン、スーダンでは2011 年以降、期限切れの被害者支援計画が更新されていない。
• 締約国の多くは、調整メカニズムの設定や計画策定を通して、被害者支援の取組みを障がい者の権利保護や障がい者支援の取組みと統合している。しかし、これらの統合は、被害者支援のニーズと現状のギャップを埋めるために必要なリソースの動員にはつながっていない。
• 締約国の多くで、被害者は彼らの生活に影響を与える政策の調整プロセスに参画しているが、多くの国で意思決定プロセスへの参画を中心にさらなる支援が必要である。多くの締約国が、あらゆる取組みの中で被害者の参画を促す努力をする必要がある。
• 半数以上の締約国が被害者支援に関係する活動やその進捗に関する情報を透明性レポートの中で提供している。しかし、期限通りに提出することや測定可能な目標の設定等、改善する点がある。

保有地雷の廃棄
締約国は5,100 万個の保有対人地雷を廃棄した。
4 つの締約国が廃棄が必要な 700 万個の対人地雷を依然保有している。これらの国は、ウクライナ(540 万個)、ベラルーシ(150 万個)、ギリシア(64 万3,265 個)、オマーン(1 万5,734 個)である。ウクライナとベラルーシ、ギリシアは条約で定められた廃棄期限をすでに迎えている。
• 35 の非締約国のうち31 カ国が地雷を保有しているとみられる。『ランドマインモニター』は1999 年の時点で1億6,000万個の対人地雷が保有されていると推定していたが、現在は5,000万個以下と推定している。

移転と製造
『ランドマインモニター』は、11 の国を対人地雷製造国と考えている。それらの国は、中国、インド、イラン、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、ベトナムである。
• ほとんどの国は現時点で地雷を大量に製造していないが、地雷を製造する権利を保有している。これらの国の中で最も活発に製造しているのは、インド、ミャンマー、パキスタン、韓国である。
• 非国家主体が以下の国で簡易地雷を含む対人地雷を製造している。アフガニスタン、コロンビア、イラク、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、ソマリア、シリア。
実質的な対人地雷の移転の禁止は、1990 年台半ばから実現している。
• 締約国であるイエメンとウクライナでは保有地雷の廃棄を完了しているにもかかわらず、依然として工場で生産された対人地雷が使われていることが明らかとなっている。このことは、国内あるいは海外から非合法なルートで地雷の移転が行われたことを示唆している。

透明性報告
2016 年10 月15 日現在、45%の締約国が2015 年分の年次透明性報告を提出した。これは、前年の41%からわずかに増加している。
• 2015 年分の透明性報告を89 カ国が提出していない。

★この件に関するお問い合わせ 地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL) E-mail: office@jcbl-ngo.org