クラスター爆弾モニター報告書2020Cluster Munition Monitor 2020

翻訳 上沼美由紀(理事)

今年度号の注目点(抜粋)~条約発効から10年のレビュー~

クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)の加盟国

オスロ条約の加盟国は計110ヵ国。201081日の発効後、15カ国が加わった。最近加盟した国はセントルシア(20209月)ニウエ(20208月)、モルディブ(20199月)の3ヵ国。

クラスター爆弾の使用

2008年に条約が採択されて以来、加盟国によるクラスター爆弾の新たな使用報告や使用疑惑で確認されたものは無い。一方、20108月から20207月の間に、イエメン、ウクライナ、カンボジア、シリア、スーダン、南スーダン、リビアの7つの非加盟国でクラスター爆弾が使用された。

シリアはクラスター爆弾を継続的に使用している唯一の国であり、20127月以降少なくとも686件のクラスター爆弾攻撃が行われている。

備蓄弾の破壊

条約第3条の下、36の加盟国と2つの署名国が、17,800万以上の子弾薬を含む計150万個のクラスター爆弾を破壊した。これにより加盟国が申告した世界の備蓄クラスター爆弾の99%が破壊されたことになる。

加盟国であるスロバキア、ブルガリア、ペルーは、2019年に212のクラスター爆弾と14,000以上の子弾薬を破壊した。備蓄破壊を完了した最新の加盟国はスイス(20193月)である。

クラスター爆弾残留領域(汚染)

合計26カ国および地域にクラスター爆弾の爆発性残骸(不発弾)が存在している(10の加盟国、13の非署名国および3つの地域)。コロンビア、パラオ、英国の3締約国においては存在するかどうかが不明、あるいは解釈が異なっている。アンゴラとコンゴ民主共和国の両署名国には不発弾がある可能性がある。

非加盟国であるイエメン、カンボジア、シリア、スーダン、南スーダン、リビアの6カ国には条約発効以後の新たな使用によりさらなる不発弾が存在しており、加えて非署名国であるウクライナにも初めて不発弾の存在が認められた。

死傷者

2010年から2019年にかけての新たなクラスター爆弾による死傷者は、20の国と地域で少なくとも4,315人。世界の死傷者の80%以上がシリアで記録され、全死傷者の40%が子どもたちである。

・条約の採択に伴い、条約以前の死傷者特定調査が更新され、より詳細で迅速な報告が可能になり、新たなクラスター爆弾攻撃が行われたことにより、死傷者数が増加した。これまでの世界における34カ国および3地域の死傷者の推定数は56,000人以上。

2019年には、計286人の新しいクラスター爆弾による死傷者が記録された。この年のシリアにおけるクラスター爆弾攻撃に関係し、 2018年の149件と比較して大幅な増加(92%)となった。しかし、2016年に記録された年間死傷者数971人を大きく下回っている。

2018年と2017年の場合と同様に、2019年に記録されたすべて犠牲者の99%を民間人が占め、犠牲者に関する統計は常にクラスター爆弾の持つ無差別兵器としての性質と一致している。

2019年、最も多い死傷者232人がシリアで記録された。これらの死傷者のほとんどが直接的なクラスター爆弾攻撃によるもので、219人が負傷または死亡。2018年に記録された死傷者65人の3倍以上となった。

2019年にはリビアでもクラスター爆弾攻撃による死傷者が報告され、アフガニスタン、イエメン、イラク、カラバフ、シリア、セルビア、ナゴルノ・西サハラ、南スーダン、ラオスPDR、レバノンの10カ国でクラスター爆弾の爆発性残骸による死傷者が記録された。

残留爆弾(不発弾)除去

・条約の発効以来、加盟6カ国が残留爆弾領域における除去作業を完了した。直近では20207月にクロアチアとモンテネグロが除去を完了した。

2019年には、加盟国により約82km2にわたる残留爆弾地帯の不発弾が除去され約96,533の子弾薬が破壊された。これは2010年から2019 年の間に加盟国によって除去が行われた560km 2の領域の15%にあたり、同期間中に破壊された子弾薬の総数(452,938)20%以上となっている。

・条約4条(不発弾の除去)の責務を担う大部分の加盟国は、中には残留爆弾のある領域が狭い場合であるにもかかわらず、期限内に除去を完了できる確証はなく、その可能性も低い。期限をさらに5年延長するよう要請した5つの加盟国は 2019年にドイツとラオスPDR(付与)、および2020年にチリ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、レバノン(202011月の第2回再検討会議で審議される)である。

リスク教育

・クラスター爆弾の残留爆弾を有する加盟国の大部分はリスク教育を施す形式を持っているが、残留爆弾に対する行動に特化したリスク教育を行っているのはラオス人民民主共和国のみである。

・条約が発効して以来、国際的にリスク教育に向けられる関心と資源が比較的少ない中で、リスク教育に関する国民の既存の水準は成果と見なすことができる。

2019年に、10の加盟国がリスク教育の調整機関を設置した。イラクとラオス人民民主共和国だけが、2019年の第7条の透明性報告書で、年齢と性別を分けて教育を受けた人々の数を提示した。

被害者支援

・クラスター爆弾禁止条約は最初の人道的軍縮条約であり、正式な義務として被災者がいるすべての加盟国の特定兵器による被害者に向けて援助を行っている。また、最高水準の援助を設定し続けている。

・被害者に対する支援は、すべての関係加盟国で行われており、様々な国における生存者のためのリハビリテーションプログラムの質と量を改善するための取り組みが報告された。しかし、そこには資金不足が被害者支援の改善と実施に影響を及ぼし、雇用、雇用、適切な生活へのアクセスを確保する分野でサービスが大幅に不足していることも記載されている。

2019年末時点で、クラスター爆弾の被害者を報告した14の加盟国のうち現行の被害者支援計画を立てていたのは6カ国のみであったが、1カ国を除くすべての国が被害者支援の焦点を示した事が報告された。

・より大きな融合に向けて各国の制度をまとめていく見込みは希薄なままであった。既存の国家サービスとメカニズムはほとんど被害者のニーズへの対応能力を欠いており、割り当てられた資金で活動している多くの支援提供者は近年予測不可能な資金減少に向き合う状態を続けている。

・活動のほとんどの調整には、生存者の代表が含まれていたが、これは概して条約自体と障害を持つ人々の権利両方から求められているような、生存者を含むクラスター爆弾の被害者との密接な協議を確保する義務を満たしてはいなかった。

生産と譲渡

・条約の下で、17の加盟国がクラスター弾の製造を中止した。

・未だにクラスター弾を生産、またはその権利を留保している16カ国はいずれも条約に加盟していない。中国とロシアは2020年に新型クラスター爆弾を積極的に研究し、開発している証拠が示されている。

・過去には、少なくとも15カ国が少なくとも60カ国に50種類以上のクラスター爆弾を譲渡している。かつて譲渡をおこなった7カ国は現在加盟国となっている。

保有

110の加盟国のうち13カ国のみが、条約で許可されているように訓練または研究目的でクラスター爆誕を保有している。カメルーンを除いてすべてヨーロッパの国々である。

イギリス、イタリア、オーストラリアは当初、クラスター爆弾を保有していたが、すでに破壊している。

ドイツは2011年以来、クラスター爆弾の数をほぼ70%削減したが、保有するクラスター弾の数は依然として最も多い。2019年、ドイツは164のクラスター爆弾を破壊し、11,284の子爆弾を訓練のために保有した。

2019年、オランダは200個のクラスター弾と17,600以上の子爆弾を破壊し、保有するクラスター爆弾の数を大幅に削減した。スウェーデン、スイス、チェコ共和国、ブルガリアもクラスター爆弾の保有数を削減した。